●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
●  Workbook精読http://acimworkshop-workbook.blogspot.jp です。
●  Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。



W-pI.133.1:1 ~ W-pI.133.14:3

Lesson 133



I will not value what is valueless.
  • value [vǽljuː] : 「〜を高く評価する、〜を尊重する」
  • valueless [vǽljuːlis] : 「価値のない、無価値な」
❖ "I will not ~ "「私は、価値のないものに価値を認めまい」。真実だけが価値がある。その他は無価値。その見極めをきっちり行う。



1. Sometimes in teaching there is benefit, particularly after you have gone through what seems theoretical and far from what the student has already learned, to bring him back to practical concerns. 
  • benefit [bénəfit] : 「恩恵、利益」
  • particularly [pərtíkjulərli] : 「特別に、とりわけ」
  • go through : 「通り抜ける、体験する、味わう」
  • theoretical [θìːərétikəl] : 「理論的な、理論の」
  • far from : 「〜から遠くに」
  • bring back : 「連れ戻す、思い出させる」
  • practical [prǽktikəl] : 「実際の、実質的な」
  • concern [kənsə́ːrn] : 「関心事、懸案、関連、関係」
❖ "Sometimes in ~ "「(真実を)教える中で、時に、益になることがある」。学ぶことだけでなく、教えることにも得るものがある。"particularly after ~ "「特に、あなたが理論的に見えることをやり通して、学習者がすでに学んだことから遠く離れた時、彼を現実的な関心事に連れ戻すことには、益がある」。ここの『あなた』と『彼』は、コース学習者として同一だと思って解釈すればいい。あなたはこれまでACIMの理論的なことを学び通して来たし、学んで来た事から関心が段々離れてきたように見えるから、この時点で、理論的なことから少し離れて、実際問題を扱った方が良さそうだし、その方が、教える上で益がある、ということ。



This we will do today. We will not speak of lofty, world-encompassing ideas, but dwell instead on benefits to you.
  • speak of : 「〜のことを話す」
  • lofty lɔ́fti] : 「高位の、気高い、高尚な」
  • encompass [inkʌ́mpəs] : 「〜を包む、網羅する」
  • dwell [dwél] on : 「〜をくよくよ考える、思案する」
  • instead [instéd] : 「代わりに、それよりむしろ」
  • benefit [bénəfit] : 「便益、恩恵、利益」
❖ "This we will ~ "「今日は、私たちはこれを行うことにする」。今日は理論を離れて、実際問題を扱うことにする。"We will not ~ "「私たちは、高尚で世界を包み込むような考え方について話すのではなく、代わりに、あなたにとって利益になることをよく考えてみる」。



2. You do not ask too much of life, but far too little. When you let your mind be drawn to bodily concerns, to things you buy, to eminence as valued by the world, you ask for sorrow, not for happiness. 
  • drawn [drɔ́ːn] : 「drawの過去分詞形」
  • draw [drɔ́ː] : 「〜を引く、引き込む」
  • bodily [bάdəli] : 「身体上の、肉体の」
  • concern [kənsə́ːrn] : 「関心事、心配、不安」
  • eminence [émənəns] : 「高位、卓越」
  • ask for : 「〜を求める、〜を要求する」
  • sorrow [sάrou] : 「悲しみ、悲哀」
  • happiness [hǽpinis] : 「幸福、喜び、幸せ」
❖ "You do not ~ "「あなたは人生に多くを求めないし、(逆に)あまりにも少ししか求めない」。お金持ちになりたい、出世したい、異性にもてたい、等々、何ともケチな要求であって、もっと価値のあるものを求めてもいい、ということ。"When you let ~ "「あなたがあなたの心を、肉体的な関心事や、買いたい物、世間から高い地位にあると評価されること、等々に引きずり込ませようとするとき、あなたは幸せではなく悲しみを要求していることになる」。ケチな要求はあなたを不幸にするだけだ。幻想を追い求めても、本当の幸福も平和も得られない。



This course does not attempt to take from you the little that you have. 
  • attempt [ətémpt] : 「〜を試してみる、〜を企てる」
❖ "This course ~ "「このコースは、あなたが持っているちっぽけな望みをあなたから奪おうとしているのではない」。この点をはき違えると、あなたは世捨て人にならざるを得なくなる。そんなことをACIMが要求しているのではない。



It does not try to substitute utopian ideas for satisfactions which the world contains. There are no satisfactions in the world.
  • substitute [sʌ́bstətjùːt] : 「〜を代わりにする、置き換える」
  • substitute A for B : 「AをBの代わりにする」
  • utopian [juːtóupiən] : 「現実不可能な、夢想的な」
  • satisfaction [sæ̀tisfǽkʃən] : 「満足、実現」
  • contain [kəntéin] : 「含む、包含する」
❖ "It does not ~ "「このコースは、世に溢れている満足感を与えるものに代えて、夢想的な考えを強いるつもりもない」。ACIMは、人々の世俗的なお楽しみを奪うことはしないし、理想論を展開するつもりもない。



3. Today we list the real criteria by which to test all things you think you want. 
  • list [líst] : 「〜を一覧表にする」
  • criteria [kraitíəriə] : 「criterionの複数形」
  • criterion [kraitíəriən] : 「基準、尺度」
❖ "Today we ~ "「私たちは今日、あなたがほしいと思っていることすべてをテストするための、本当の基準をリストアップする」。本当の基準とは、エゴの評価基準ではなく、ホーリー・スピリットの思考システムに準じた基準、ということ。



Unless they meet these sound requirements, they are not worth desiring at all, for they can but replace what offers more. 
  • unless [ənlés] : 「〜でない限り」
  • sound [sáund] : 「健全な、理にかなった」
  • requirement [rikwáiərmənt] : 「必要条件、要件」
  • worth [wə́ːrθ] : 「〜の価値がある、〜に値する」
  • desire [dizáiər] : 「〜が欲しいと強く思う」
  • replace [ripléis] : 「〜に取って代る、置き換える」
  • offer [ɔ́fər] : 「差し出す、〜を提供する」
❖ "Unless they ~ "「あなたが望むものが、健全な要求に合致しない限り、それは望むにまったく値しないことになる」。"for they can ~ "「なぜなら、それは、より多くを差し出してくれるものと置き換え出来ないからだ」。あなたがガラス玉をどんなに望んだとしても、より多くの価値のあるダイヤモンドとそれを置き換えて、あなたにガラス玉を差し出すわけにはいかない。ホーリー・スピリットはあなたにより多くの利益となるものを差し出してくれる。あなたが望むものがホーリー・スピリットの基準に合致しないなら、あなたの望みはつまらないガラス玉だ。



The laws that govern choice you cannot make, no more than you can make alternatives from which to choose. 
  • law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規」
  • govern [gʌ́vərn] : 「支配する、統治する」
  • choice [tʃɔ́is] : 「選ぶこと、選択」
  • no more than : 「たった、わずか」
  • alternative [ɔːltə́ːrnətiv] : 「取って代わるもの」
❖ "The laws that ~ "意訳する、「あなたは、選択する内容を決める法を作り出すことは出来ない」。"no more than ~ "意訳する、「せいぜい、選択出来るものの中から何かを選ぶことしか出来ない」。あなたは選択肢の中から、あれかこれか選ぶことは出来るが、その選択肢を統括する法(The laws that govern choice)を勝手に作り出すことは出来ない。したがって、"alternative"は、あれに代えてこれ、これに代えてあれ、というような選択肢のこと。4段落目を読めば分かるのだが、究極的に選択は二者択一であり、エゴを選ぶかホーリー・スピリットを選ぶかのいずれかしかない。
もちろん、実際の生活の中では、エゴとホーリー・スピリットを両端とする線分上に無数に存在する具体的な選択肢の中から、あなたは選択することになる。エゴ寄りの選択をすることもあり、ホーリー・スピリット寄りの選択をすることもある。



The choosing you can do; indeed, you must. But it is wise to learn the laws you set in motion when you choose, and what alternatives you choose between.
  • choose [tʃúːz] : 「〜を選ぶ、〜を選択する」
  • wise [wáiz] : 「賢い、賢明な」
  • set in motion : 「動かす、発動する」
❖ "The choosing ~ "「実際、あなたが出来る選択をあなたは選択しなくてはならない」。あなたは選択せずにこの世を生きることは出来ない。選択すべきことを選択し、実行するしかないのだ。"But it is ~ "「しかし、あなたがいつ選択という行動に出るか、いろいろある中であなたはどれを選ぶか、そういった法を学ぶのは賢いことだ」。選択して生きて行くにしても、エゴを選択するかスピリットを選択するか、多くのバリエーションの中から何を選択をするか、それはあなたの思考と感性にかかっている。つまり、それはあなたが決める法である。また、選択した内容を実行に移すタイミングもあなた自身の法に従ってなされなくてはいけない。そういった選択と選択の実践を正しい基準で実行する法を学ぶことは非常に大切である。



4. We have already stressed there are but two, however many there appear to be. The range is set, and this we cannot change. 
  • already [ɔːlrédi] : 「すでに、とっくに〜済み」
  • stress [strés] : 「〜を強調する、強く主張する」
  • appear [əpíərəns] : 「〜のように見える」
  • range [réindʒ] : 「範囲、限界、領域」
❖ "We have already ~ "「私たちは既に、選択には多くがあるように見えても、二つしかないと強調してきた」。"The range is ~ "「選択範囲は決められており、これを私たちは変えることは出来ない」。もちろん、選択範囲とは、エゴとホーリー・スピリットを両端とする領域である。多くの選択が出来るように見えるのは、その両端の間にある多くの代替選択が提示されているように感じるからだ。線分上には無数の点が存在する。しかし、線分から外れた点は存在しない。



It would be most ungenerous to you to let alternatives be limitless, and thus delay your final choice until you had considered all of them in time; and not been brought so clearly to the place where there is but one choice that must be made.
  • ungenerous [ʌ̀ndʒénərəs] : 「けちな、狭量な、卑劣な」
  • limitless [límitlis] : 「制限のない、無限の」
  • delay [diléi] : 「〜を遅らせる」
  • final [fáinl] : 「最後の、最終の、決定的な」
  • consider [kənsídər] : 「〜とみなす、熟考する」
  • in time : 「時間内に、やがて」
  • brought [brɔ́ːt] : 「bringの過去・過去分詞形」
❖ "It would be ~ "意訳する、「選択の代替案が無数にあるとされるのは、あなたにとっては随分ケチなことのように思われるだろう」。二者択一なら選択もしやすかろうが、エゴとホーリー・スピリットの間に無数の選択肢があって、あれこれ迷って選択しづらい。何と不親切でケチ臭いと感じてしまう。"and thus delay ~ "「こうして、時間内にすべての中から最終的な選択をするのを遅らせてしまうのだ」。"and not been ~ "「そして、なされるべき選択はたった一つだとはっきりわかる地点まで連れてこられることはない」。あなたはあれこれ選択に迷う。しかも選択の制限時間は限られている。たった一つの正しい選択にたどり着くのに時間が掛かりすぎて、ついに選択のチャンスを逃す。選択の法は随分ケチだと思ってしまう。



5. Another kindly and related law is that there is no compromise in what your choice must bring. 
  • kindly [káindli] : 「親切な、優しい」
  • related [riléitid] : 「 関係のある、関連した」
  • compromise [kɑ́mprəmàiz] : 「妥協、譲歩」
❖ "Another kindly ~ "「また別の(選択に)関連した優しい法は、あなたの選択がもたらすに違いないものに一切妥協がないというものである」。ホーリー・スピリットを選択すれば、それがもたらす結果は曖昧ではなく、真実に妥協を許することなく、必ずあなたに優しい奇跡をもたらす。



It cannot give you just a little, for there is no in between. Each choice you make brings everything to you or nothing. 
  • in between : 「二つのものの間に、中間に」
❖ "It cannot ~ "「その選択は、あなたにわずかなものしか提供できないというのではない」。"for there ~ "「なぜなら、すべてと無の間には何もないからだ」。選択は、究極的にエゴとホーリー・スピリットの二者択一であり、エゴを選択すれば何も得られず、ホーリー・スピリットを選択すれば、ホーリー・スピリットの与えてくれるすべてがあなたのものとなる。"Each choice ~ "「あなたが選択するたびに、あなたはすべてを得るか、何も得ないか、そのどちらかだ」。エゴを選択しても何かは得られると思われるかもしれない。しかし、エゴを選択して得られるものは絵に描いた餅である。それを喜びとするかどうか、あなたの選択が試される。



Therefore, if you learn the tests by which you can distinguish everything from nothing, you will make the better choice.
  • distinguish [distíŋɡwiʃ] : 「見分ける、識別する」
❖ "Therefore, if ~ "「したがって、もしあなたが、すべてか無かを見分けることが出来るテストを学ぶなら、より良い選択が出来るようになる」。あなたが選択を迫られたとき、それがエゴ的かホーリー・スピリット的か、その見極めが出来るようになれば、より良い選択が出来るようになる。



6. First, if you choose a thing that will not last forever, what you chose is valueless. 
  • last [lǽst] : 「続く、存続する、持続する」
  • forever [fərévər] : 「永遠に、永久に」
  • valueless [vǽljuːlis] : 「無価値な」
❖ "First, if ~ "「まず初めに、もしあなたが、永遠に続くことのないものを選択したなら、あなたの選んだものは価値がない」。永遠に続かないのだから、それは真実ではない。したがって、実相的には、それは幻想であって無価値だ。



A temporary value is without all value. Time can never take away a value that is real. 
  • temporary [témpərèri] : 「一時的な、仮の、当座の」
  • take away : 「奪い去る、連れ去る、持ち去る」
❖ "A temporary ~ "「一時的な価値は、まったく価値がない」。時間が経つにしたがって価値が薄れているようなものは、もともと何の価値もない。"Time can ~ "「時間は、実相的な価値を奪うことは決して出来ない」。時間依存しない永遠の価値は、実相的な真実である。



What fades and dies was never there, and makes no offering to him who chooses it. 
  • fade [féid] : 「薄くなる、消えていく」
❖ "What fades ~ "「はかなく消え、死に絶えてしまうものは、決して存在しない」。時間と供に崩壊し死に向かうものは幻想であって、実在するものではない。"and makes ~ "「したがって、それは、それを選択した者に何も提供しない」。無を選択したのだから、結果的に何も手に入らない。



He is deceived by nothing in a form he thinks he likes.
  • deceive [disíːv] : 「欺く、惑わす、だます」
  • form [fɔ́ːrm] : 「形、外形、構造、現れ」
❖ "He is deceived ~ "「彼は、彼が好きだと思う形の無によって騙されているのだ」。無なるものに好きなイメージを投影して、あたかもそれが存在しているかのように錯覚し、それを選択する。自分を騙しているのだ。子供のままごと遊びを思い出せば理解出来よう。



7. Next, if you choose to take a thing away from someone else, you will have nothing left. 
  • have [həv] : 「〜に〜させる」
  • left [léft] : 「leaveの過去・過去分詞形」
❖ "Next, if ~ "「次に、もしあなたが他者からものを奪う選択をしたなら、あなたには何も残されない」。奪うことで得ることは出来ない。



This is because, when you deny his right to everything, you have denied your own. 
  • deny [dinái] : 「〜を否定する、拒絶する」
  • right [ráit] : 「権利、利権」
❖ "This is because ~ "「これは、あらゆるものに対する相手の権利を否定し、あなた自身の権利も否定したことになるからだ」。



You therefore will not recognize the things you really have, denying they are there. 
  • recognize [rékəɡnàiz] : 「〜を認識する、認める」
❖ "You therefore ~ "「したがって、あなたは、あなたが本当に持っているものを認識することなく、そこにあることを否定しているのだ」。



Who seeks to take away has been deceived by the illusion loss can offer gain. Yet loss must offer loss, and nothing more.
  • illusion [ilúːʒən] : 「幻想、幻覚、錯覚」
  • loss [lɔ́s] : 「失うこと、喪失、紛失」
  • gain [géin] : 「得ること、獲得」
❖ "Who seeks ~ "「奪おうとする者は、喪失は獲得を提供するという錯覚によって騙されている」。誰かが失えば、誰かが得るいう原理を信じている限り、彼はエゴの思考システムに騙されている。"Yet loss must ~ "「しかし、喪失は喪失を提供するだけであり、それ以上のものではない」。ホーリー・スピリットの思考システムでは、与えることと得ることは同一であり、そこに喪失はない。奪われて喪失したなら、それはエゴの原理による幻想なのだ。失ったと感じることは、失うことなどないという真実を失ったことを意味する。ただそれだけだ。



8. Your next consideration is the one on which the others rest. Why is the choice you make of value to you? 
  • consideration [kənsìdəréiʃən] : 「考慮、熟慮」
  • rest [rést] on : 「〜に基礎を置く、〜を当てにする」
  • of value : 「価値のある」
❖ "Your next ~ "「次にあなたが考えることは、他の考えの土台になっているものだ」。"Why is the ~ "「あなたがなす選択は、なぜあなたにとって価値があるか」。選択と価値の関係が、他の考えの基盤になっている。



What attracts your mind to it? What purpose does it serve? Here it is easiest of all to be deceived. For what the ego wants it fails to recognize. 
  • attract [ətrǽkt] : 「引き付ける、魅了する」
  • purpose [pə́ːrpəs] : 「目的、目標」
  • serve [sə́ːrv] : 「〜に役立つ、〜に仕える」
  • fail [féil] : 「失敗する、しくじる」
❖ "What attracts ~ "「いったい何が、あなたの心をその選択に引きつけるのだろう」。"What purpose ~ "「その選択は、どんな目的のために役立つのだろう」。"Here it is ~ "意訳する、「最も騙されやすいポイントがここにある」。"For what ~ "「なぜなら、エゴは、自分が何を望んでいるか認識し損ねているからだ」。エゴは、分離による混乱と破壊を望んでいるだけであって、それさえも認識していない。



It does not even tell the truth as it perceives it, for it needs to keep the halo which it uses to protect its goals from tarnish and from rust, that you may see how "innocent" it is.
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • halo [héilou] : 「後光、暈」
  • tarnish [tάːrniʃ] : 「曇り、汚点」
  • rust [rʌ́st] : 「さび」
  • innocent [ínəsənt] : 「無実の、潔白な、無害の」
❖ "It does not ~ "「エゴは真実を知覚したとしても、その真実を告げることさえしない」。たとえば、あなたの心の中にホーリー・スピリットが宿っていると知っていても、あなたにその事実を告げようとはしない。ひたすら隠すのである。"for it needs ~ "「なぜなら、エゴがいかに『無害』であるかあなたに分からせるために、エゴは、エゴの目的を汚れや錆から守るために利用する後光を保持しておく必要があるからだ」。あなたが真実を知れば、エゴのメッキが剥がれてしまう。そこでエゴは、あなたに真実を知らせることなく、自分の周りに後光を放って、いかにも自分が神聖で無害な存在か、あなたに知らしめようとする。こうしておけば、エゴの目的が偽物であって、時間と供に汚れ、錆びてしまうのをあなたの目から隠しておけると思っているわけだ。



9. Yet is its camouflage a thin veneer, which could deceive but those who are content to be deceived. Its goals are obvious to anyone who cares to look for them. 
  • camouflage [kǽməflὰːʒ] : 「カモフラージュ、偽装」
  • thin [θín] : 「薄い、実質のない」
  • veneer [vəníər] : 「ベニヤ、化粧板」
  • be content to : 「〜して満足する、〜に甘んじている」
  • obvious [ɑ́bviəs] : 「明らかな、見え透いた」
  • care to : 「〜したいと思う」
❖ "Yet is its ~ "「しかし、エゴの偽装は薄っぺらなベニヤ板である」。きらびやかな後光は、まるでベニヤ板で作った飾り物。"which could ~ "「それは、騙されることに満足する者だけを騙すことが出来る」。"Its goals are ~ "「目的をしっかり見つけようとする者にとっては、エゴの目的は見え見えである」。エゴのカモフラージュには騙されない。



Here is deception doubled, for the one who is deceived will not perceive that he has merely failed to gain. He will believe that he has served the ego's hidden goals.
  • double [dʌ́bl] : 「〜を二重にする」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く、〜を見抜く」
  • merely [míərli] : 「ただ単に、単に」
  • hidden [hídn] : 「隠された、秘密の」
❖ "Here is ~ "「ここで、騙しが二重にされる」。"for the one ~ 意訳する、"「なぜなら、(エゴに)騙される者は、彼が単に得ることに失敗しただけだとは知覚しないだろうからだ」。この文の解釈は要注意。得ることに失敗したと気付くには気付くが、それだけで終わりではない、という意味合い。気付いただけで終わりにせず、"He will ~ "「彼は、エゴの秘密の目的に寄与したと信じるだろう」。たとえばエゴは、物質的な豊かさが幸せをもたらすと言って、あなたにきらびやかな贅沢を見せびらかす。これがエゴの最初の騙し。あなたはエゴに騙されて、金儲けに奔走する。しかしその結果、どんなにお金を儲けて物質的に豊かになっても、なぜか幸せは得られないと知る。だが、あなたはそれを知っても終わりにしない。100万円で幸せになれないら500万円、500万円でダメなら1000万円で幸せになれるだろうと、エゴの隠された目的に寄与するかのように、ますます金儲けに奔走する。つまり、今度は、あなたはあなた自身を騙すのである。騙しが二重にされるのだ。



10. Yet though he tries to keep its halo clear within his vision, still must he perceive its tarnished edges and its rusted core. 
  • clear [klíər] : 「澄んだ、明快な」
  • vision [víʒən] : 「視覚、視力」
  • perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く」
  • tarnished [tάːrniʃt] : 「変色した、色あせた」
  • edge [édʒ] : 「端、へり、境界」
  • rust [rʌ́st] : 「錆させる」
  • core [kɔ́ːr] : 「中心部、中核部」
❖ "Yet though ~ "「彼の視野の中でその後光を鮮明にしておこうとするのだが、彼は、後光の周りが変色し、中心部が錆付いているのを知覚せざるを得ない」。要するに、偽物の後光のメッキが剥がれる。



His ineffectual mistakes appear as sins to him, because he looks upon the tarnish as his own; the rust a sign of deep unworthiness within himself. 
  • ineffectual [ìniféktʃuəl] : 「効果のない、無駄な、無力な」
  • appear [əpíərəns] : 「〜のように見える、〜と思われる」
  • sign [sáin] : 「象徴、しるし、証拠、兆候」
  • tarnish [tάːrniʃ] : 「曇り、汚点」
  • unworthiness [ʌ̀nwə́ːrðinis] : 「価値のないこと、無価値」
❖ "His ineffectual ~ "「彼の無駄な誤りは、彼には罪に見える」。"because he ~ "「なぜなら、彼は自分自身を汚点だと見るからだ」。前文の"tarnished"「変色した、色あせた」と、ここの"tarnish"「曇り、汚点」を並べて、言葉遊びをしている。"the rust a sign ~ "「錆は、彼人の心の中の深い無価値さを示すことになる」。



He who would still preserve the ego's goals and serve them as his own makes no mistakes, according to the dictates of his guide. 
  • preserve [prizə́ːrv] : 「〜を保つ、保存する、保護する」
  • according to : 「〜に従って、〜と一致して、〜に準じて」
  • dictate [díkteit] : 「命令、指示」
❖ "He who would ~ "「彼を導く命令に従って言えば、エゴの目的を彼自身の目的としてなおも保持し仕えようとする彼は、何一つ誤りを犯していないことになる」。エゴは、メッキが剥げてもなお彼を騙し続けようとする。



This guidance teaches it is error to believe that sins are but mistakes, for who would suffer for his sins if this were so?
  • guidance [gáidns] : 「指導、手引き、指図」
  • suffer [sʌ́fər] : 「苦しむ、苦痛を感じる」
❖ "This guidance ~ "「エゴのこの指導は、罪は単なる誤りだと信じることこそが誤りだと教える」。エゴは、誤りは幻想に過ぎないと信じることが誤りだと言う。"for who would ~ "「と言うのも、もしその通りだとしたら、一体誰が、自分の罪のために苦しむのだろう」。彼は、自分の後光のメッキが剥げて汚点が見えたとき、それは自分の罪の印だと認識する。その後光も汚点も幻想だと知らないからだ。ホーリー・スピリットは、彼にそれは幻想であって、自分に罪があるということも幻想だと教える。それに対してエゴは、それこそが誤りだと言う。エゴは、彼の後光もその汚点も実在であり、したがって、彼の罪は実在すると言っているのだ。しかも、それはエゴの指導に叶ったことであって、エゴの目的に沿った結果だから、罪の意識に苦しむ必要はない、と言うのである。エゴの意見が正しいなら、"who would suffer for his sins"「一体誰が自分の罪に苦しむだろう」となる。



11. And so we come to the criterion for choice that is the hardest to believe, because its obviousness is overlaid with many levels of obscurity. 
  • come to : 「また戻る、立ち向かう」
  • criterion [kraitíəriən] : 「基準、尺度」
  • hard [hάːrd] : 「難しい、困難な」
  • obviousness [άbviəsnis] : 「自明性」
  • overlay [òuvərléi] : 「かぶせる覆う、覆う」
  • obscurity [əbskjúərəti] : 「暗いこと、曖昧」
❖ "And so we ~ "「さて、私たちは、信じるのが最も難しい選択基準に立ち向かう」。"because its ~ "「なぜなら、選択基準の明白さは、幾重もの曖昧さの階層で覆われているからだ」。正しい選択が出来ないように、エゴは幾重もの煙幕を張って、あなたを曖昧さの中に放り出す。



If you feel any guilt about your choice, you have allowed the ego's goals to come between the real alternatives. 
  • guilt [ɡílt] : 「犯罪、あやまち、罪」
  • allow [əláu] : 「許す、許可する」
  • alternative [ɔːltə́ːrnətiv] : 「取って代わるもの、別の可能性」
❖ "If you feel ~ "「もしあなたが、あなたの選択に関して罪の意識を感じたなら、それに代わる本当の選択との間にエゴの目的が侵入することをあなたは許したことになる」。たとえば、誰かがあなたを騙したとしよう。あなたは不正を働いたその人物を攻撃する選択をする。しかし、彼を憎み攻撃することに対してあなたは罪の意識を感じる。あなたは彼の不正を赦す選択も出来たはずなのだ(the real alternatives)。だから、あなたは自分自身の罪の意識を感じる(feel any guilt)。それなのに、あなたは彼を攻撃することを選択したのだから、それはエゴに迎合し、エゴの目的の侵入を許したことになる(allowed the ego's goals to come)。



And thus you do not realize there are but two, and the alternative you think you chose seems fearful, and too dangerous to be the nothingness it actually is.
  • fearful [fíərfəl] : 「恐ろしい」
  • dangerous [déindʒərəs] : 「危険な、物騒な」
  • nothingness [nʌ́θiŋnis] : 「無、非実在、無価値」
  • actually [ǽktʃuəli] : 「実際は、本当は、実は」
❖ "And thus ~ "「こうしてあなたは、選択にはたった二つしかないことに気付かず、あなたが選択と思ったものが恐ろしく見えてくる」。"and too dangerous ~ "「それはあまりにも危険なので、その選択が実際は無だとは思えなくなってしまう」。あなたはエゴの目的に迎合し、あなたを騙した彼を攻撃する選択をした。あなたには、選択は、エゴかホーリー・スピリットか、その二者択一しかないとは理解出来ない。エゴの目的に叶う選択だけが唯一の選択だと思っている。そう思っていながら、どこかで罪の意識を抱いてしまうのだ。エゴの目的に叶った選択は恐ろしい。なぜなら、それは攻撃と破壊を目指すものだからだ。あなたはその危険性に恐れをなし、恐怖に気を取られて、それが幻想であり無であることにまったく気付かない。
エゴの選択とは、夢の中で攻撃し破壊せよというエゴの命令の選択に過ぎない。夢の中で、夢が現実だと思っているあなたには、それが唯一の選択だと信じてしまうのだ。それは危険で恐ろしく、罪の意識を生み出す選択である。しかし、それは夢の中の出来事であり、夢の中の選択でしかない。本当は無なのだ。しかし、あなたは別の選択(alternative)も出来るのである。夢から覚めるという選択であり、これがホーリー・スピリットを選ぶということである。



12. All things are valuable or valueless, worthy or not of being sought at all, entirely desirable or not worth the slightest effort to obtain. 
  • valuable [vǽljuəbl] : 「高価な、役立つ、有益な」
  • valueless [vǽljuːlis] : 「無価値な、価値のない」
  • worthy [wə́ːrði] : 「尊敬すべき、価値ある」
  • sought [sɔ́ːt] : 「seek の過去・過去分詞形」
  • entirely [entáiərli] : 「全く、完全に」
  • desirable [dizáiərəbl] : 「望ましい、価値のある」
  • worth [wə́ːrθ] : 「価値」
  • slight [sláit] : 「非常に小さい、ほんのわずかな」
  • effort [éfərt] : 「尽力、努力」
  • obtain [əbtéin] : 「手に入れる、得る」
❖ "All things are ~ "「すべては、価値があるかないか、探し求める価値があるかないか、完全に望ましいか、あるいは得るための努力にまったく値しないか、どちらかである」。



Choosing is easy just because of this. Complexity is nothing but a screen of smoke, which hides the very simple fact that no decision can be difficult. 
  • complexity [kəmpléksəti] : 「複雑さ、複雑性」
  • decision [disíʒən] : 「決定、決断、決心」
  • difficult [dífikʌ̀lt] : 「困難な、厳しい、難しい」
❖ "Choosing is ~ "「単にこのような理由によって、選択は容易なのだ」。"Complexity is ~ "「(選択が)複雑見えるのは、単に煙幕以外の何ものでもない」。"which hides ~ "「それは、どんな決定も難しくはないという実に単純な事実を隠しているのだ」。



What is the gain to you in learning this? It is far more than merely letting you make choices easily and without pain.
  • far more than : 「〜をはるかに超えて」
❖ "What is the ~ "「これを学ぶ中で、あなたは何を得られるだろう」。"It is far ~ "「それは、単にあなたが苦痛を感ずることなく容易に選択出来るようにしてくれるに止まらず、それ以上のものである」。



13. Heaven itself is reached with empty hands and open minds, which come with nothing to find everything and claim it as their own. 
  • reach [ríːtʃ] : 「達する、至る、手が届く」
  • empty [émpti] : 「空の、空っぽの」
  • claim [kléim] : 「主張する、言い張る、要求する」
❖ "Heaven itself ~ "「天の王国自体は、手に何も持たず、開かれた心をもって、到達できる」。"which come with ~ "意訳する、「そこでは、何も持たずに来たにもかかわらず、すべてを見出すことが出来、自分自身のものだと主張できるのだ」。神から継承した神の属性のすべてがあなたのものだと知ることが出来る。



We will attempt to reach this state today, with self-deception laid aside, and with an honest willingness to value but the truly valuable and the real. 
  • attempt [ətémpt] : 「〜を試してみる、〜を企てる」
  • self-deception [disépʃən] : 「自己欺瞞、自分を騙すこと」
  • laid [léid] : 「layの過去・過去分詞形」
  • lay aside : 「やめる、捨てる、放棄する」
  • honest [άnist] : 「正直な、誠実な」
  • willingness [wíliŋnis] : 「意欲、やる気」
❖ "We will attempt ~ "「今日私たちは、自己欺瞞を廃し、本当に価値のあるものや実在するものだけに価値を認めようとする正直な気持ちをもって、この状態に到達することになる」。ここの自己欺瞞とは、エゴの騙しを疑うことなく信じてしまうこと。エゴの騙しに屈せず、実相的な真実だけに価値を見て、それを求めるのである。



Our two extended practice periods of fifteen minutes each begin with this:

        I will not value what is valueless, 
        and only what has value do I seek, 
        for only that do I desire to find.
  • extended [iksténdid] : 「延長した、延長された」
  • desire [dizáiər] : 「〜が欲しいと強く思う」
❖ "Our two extended ~ "「一日2回、各々15分の長めの練習では、次の様に言って練習を開始する」。"I will not ~ "「私は、価値のないものに価値を認めまい」。"and only what ~ "「そして、価値のあるものだけを、私は追い求めよう」。"for only that ~ "「なぜなら、それだけが、私が見出したいと願うものだから」。



14. And then receive what waits for everyone who reaches, unencumbered, to the gate of Heaven, which swings open as he comes. 
  • receive [risíːv] : 「受け取る、聞く、知る」
  • wait for : 「〜を待つ」
  • unencumber [ʌ̀ninkʌ́mbər] : 「〜を重荷から解放する」
  • swing [swíŋ] : 「振れる、揺れる」
  • swing open : 「(ドアなどが前後に揺れて)開く」
❖ "And then receive ~ "「そしてその後、重荷から解放され、天の王国のゲートに到達した者すべてを待ち受けているものを受け取りなさい」。"which swings ~ "「その人がやって来ると、天の王国のゲートは開かれるのだ」。



Should you begin to let yourself collect some needless burdens, or believe you see some difficult decisions facing you, be quick to answer with this simple thought:

        I will not value what is valueless, 
        for what is valuable belongs to me.
  • should [ʃúd] : 「万一〜ならば」
  • collect [kəlékt] : 「集める、収集する」
  • needless [níːdləs] : 「不必要な、無用の」
  • burden [bə́ːrdn] : 「負担、重荷」
  • difficult [dífikʌ̀lt] : 「困難な、厳しい」
  • be quick to : 「すぐに〜する」
  • thought [θɔ́ːt] : 「思い、考え、思考」
  • belong [bilɔ́ːŋ] to : 「〜に属する、〜の所有である」
❖ "Should you ~ "「万が一、必要もない重荷を自分自身で集めようとし始めたり、直面する決定に何らかの困難さを感じたなら、すぐに、次の様なシンプルな思いをもって答えなさい」。エゴの誘惑に負けそうになったら、次の様に自分に言い聞かせればよい。"I will not ~ "「私は、価値のないものに価値を認めまい」。"for what is ~ "「なぜなら、価値あるものだけが私のものだから」。
 
 
 



Archive

Notification

My photo


❖ Text精読、完了しました。4年8ヶ月、1256回の投稿でした。長期に渡ってお付き合いいただき、感謝します。
❖ 引き続き、Workbook精読をご覧下さい。場所は「http://acimworkshop-workbook.blogspot.jp」です。
❖ Text精読の手直しも始めました。月日をかけて見直していきます。
❖ AmazonからKindle版の精読シリーズを出版開始しました。『どこでもAcim』をご希望の方は是非どうぞ。
❖ Google PlayとiBookstoreからepub版の精読シリーズを出版開始しました。Kindle版で窮屈さをお感じでしたら、こちらをどうぞ。
❖ Urtext精読をAmazonからKindle本として上梓しました。Urtextは非常に面白いです。臨場感は半端でありません。

oohata_mnb@yahoo.co.jp
oohata.m@coda.ocn.ne.jp

アクセスカウンター
Powered by Blogger.