●  "A Course in Miracles (ACIM)""Text" (1975年版) の英語原文を、単に翻訳するだけでなく、精読、精解していくワークショップです。
●  Title に、たとえば T-26.IV.4:7 とありましたら、これは "Text" の Chapter 26、Section IV、Paragraph 4、Sentence 7 という場所を示しています。
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W-pI.7.1:1 ~ W-pI.7.5:3

Lesson 7 



I see only the past.
  • past [pǽst] : 「過去、昔、過ぎたこと、過去のこと」
❖ "I see only ~ "「私は、過去を見ているだけに過ぎない」。人間の知覚は、過去の経験に深く依存している。物体を、その色、形、重さ、感触、等々で把握しているのだが、加えて、過去の経験記憶が、物の存在を安定化させている。過去の経験記憶なくしては、知覚は安定化しないのだ。ところで、物は知覚の錯覚が生み出した幻に過ぎない。その色、形、重さ、感触、等々も幻想である。『色即是空、空即是色、受想行識亦復如是』である。ならば、過去の経験記憶自体も幻想なのだ。突き詰めると、時間自体が幻想である。実相は無時間である。過去も現在も未来もない。今という瞬間があるのみ。その瞬間が、いわば、永遠に持続するのだ。実相世界は無時間無空間の世界であるが、厳密には、時間や空間がホログラフィック的に畳み込まれている。組み込まれ、織り込まれているのだ。神の子が実相世界で夢を見るとき、その畳み込まれた時空が亡霊のように息を吹き返し、時間と空間が幻想として立ち上がる。神の子は、立ち上がった時空間に様々な物体を幻想して配置し、夢のドラマを繰り広げるのである。苦と痛みのドラマが始まるのだ。



1. This idea is particularly difficult to believe at first. Yet it is the rationale for all of the preceding ones.
  • particularly [pərtíkjulərli] : 「特別に、かなりの程度、非常に」
  • difficult [dífikʌ̀lt] : 「困難な、厳しい」
  • believe [bilíːv] : 「信じる、真に受ける、確信する、信頼する」
  • at first : 「最初は、初めは、当初は」
  • rationale [ræ̀ʃənǽl] : 「論理的根拠、論拠、理論的解釈」
  • preceding [prisíːdiŋ] : 「〜に先行する、先立つ」
❖ "This idea is ~ "「このものの見方は、初めのうちは、特に信じがたいものである」。"Yet it is the rationale ~ "「しかし、このものの見方は、前出のものの見方すべてにとっての理論的根拠になっている」。過去の経験記憶、時間の存在の錯覚が、今までのものの見方の根拠となっている。つまり、時間と空間という幻想の座標軸を設けた上で、その座標系に、幻想の物体、事物、感覚、思い込み、思考、等々を配置し、展開させているに過ぎないのだ。




         It is the reason why nothing that you see means anything.
        It is the reason why you have given everything you see all the 
        meaning that it has for you.
        It is the reason why you do not understand anything you see.
        It is the reason why your thoughts do not mean anything, 
        and why they are like the things you see.
        It is the reason why you are never upset for the reason you think.
        It is the reason why you are upset because you see something 
        that is not there.
  • reason [ríːzn] : 「理由、動機、原因、根拠」
  • thought [θɔ́ːt] : 「思考、思索、考え」
  • mean [míːn] : 「〜を意味する、重要性を持つ、大事である」
  • given [ɡívən] : 「giveの過去分詞形」
  • meaning [míːniŋ] : 「意味、意義、意図、真意」
  • upset [ʌpsét] : 「動揺して、気が動転して、取り乱して、狼狽して」
❖ "It is the reason ~ "「それが(過去しか見てないことが)、あなたが目にする物すべてが意味を持たない理由である」。幻想の時間軸を遡って、過去の経験を頼りに物を見ているに過ぎないから、そんなものは意味を持たないのだ。以下、同様に、"It is the reason ~ "「それが(過去しか見てないことが)、あなたが目にするすべてに、あなたのためだけの意味をあなたが与えた理由である」。あなたは、そうあって欲しいと思った物に、あなただけに意味のある価値を与え、それを幻想した。時間の中で消滅してしまわないように、過去の経験に意味を与えたのだ。しかし、あなたが勝手に意味を与えても、所詮、幻想は幻想であって意味などない。"It is the reason ~ "「それが(過去しか見てないことが)、あなた目にするものを理解出来ない理由である」。過去という幻想に取り憑かれているから、真実が見えてこないのだ。時間軸を消したら、幻想のすべては消滅する。そんな幻想を理解など出来るはずはない。"It is the reason ~ "「それが(過去しか見てないことが)、あなたの思いが何の意味もない理由であり、あなたが目にするものと似たり寄ったりである理由だ」。あなたの思いすら、時空の枠の制限を受けている。過去の思いを今に引きずっている、その思いに意味があるか? 有りもしない幻想の過去の経験を、大切な思いとして引きずり回しているだけだ。だから、あなたの過去の思いは、あたかも古びた茶わんのように、あるいは、古びた記念品のように、様々な時代を思わせる物品と似てくるのだ。"It is the reason ~ "「それが(過去しか見てないことが)、あなたが思う理由のせいで、あなたは決して動揺などしないという理由である」。あなたが思う理由は過去事象である。過去に意味がないように、過去の理由にも意味はない。意味ないことで動揺することなどないのだ。"It is the reason ~ "「それが(過去しか見てないことが)、そこに存在していない何かを見たがために動揺している理由である」。存在さえしない幻想の過去によって、あなたは動揺しているに過ぎないのだ。要するに、あなたはあなたの登場するビデオを再生して見ているだけであって、その再生された画面には時間と空間が存在しているように見えるが、所詮、単なる映像であって幻想に過ぎない。ビデオの中の物体も、登場人物の思いも、過去の思い出も、感動も動揺も、すべてビデオの中の出来事であって幻想に過ぎない。



2. Old ideas about time are very difficult to change, because everything you believe is rooted in time, and depends on your not learning these new ideas about it. 
  • change [tʃéindʒ] : 「〜を変える、〜を変更する、〜を変換する」
  • root [rúːt] : 「〜を植え付ける、根付かせる」
  • depend on : 「〜によって決まる、〜次第である、〜に頼る」
❖ "Old ideas about ~ "「時間についての古い考え方を変えるのは、非常に難しい」。"because everything ~ "「なぜなら、あなたが(存在していると)信じるあらゆるものは、時間に根ざしているからであり、」"and depends on ~ "「あなたが、時間についての新しい考え方を学ぼうとしないことにも原因がある」。ニュートン力学の時代では、時間は普遍的に、また不変的に、経過していくものと考えられていた。ご存知のように、この考えを覆(くつがえ)したのが、アインシュタインの相対性原理である。時間は速度依存し、観測者に対して速度をもつ物体の時間は遅れる。ところが、相対論と同時代の量子論は、極微の世界(素粒子の世界)の奇妙な振る舞いに気付いた。観測それ自体の奇妙な役割であり、存在それ自体の奇妙な振る舞いである。量子論の最先端を走っていたアメリカの物理学者デビッド・ボーム(David Bohm)は、この世界(宇宙)が、明在系(explicate order)と暗在系(implicate order)の二つに分けられ、明在系を構成するあらゆる情報が暗在系に記録されていて、暗在系の上に明在系が立ち上がっているというモデルを提唱した。いわば、あらゆる情報がホログラフィック的に記録され、その記録された情報が逆変換されることで、この世界が生み出されていると言うのだ。したがって、ホログラフィック・ユニバースには、空間も時間も畳み込まれて、表面上は存在しない。無時間無空間の暗在系から、時間と空間が存在する明在系が生み出されるのである。もちろん、これはデビッド・ボームの仮説に過ぎず、物理学会から認められた理論ではない。しかし、この論が誤りであったとしても、今までの時空間論では、物理的な説明が行き詰まってしまうことは確かであって、新しい空間と新しい時間の考え方が求められていることだけは確かだ。



Yet that is precisely why you need new ideas about time. This first time idea is not really so strange as it may sound at first.
  • precisely [prisáisli] : 「正確に、精密に、まさに、はっきり」
  • really [ríəli] : 「実際には、ほんとうは、確かに」
  • strange [stréindʒ] : 「奇妙な、変わった、変な」
  • sound [sáund] : 「〜に聞こえる、〜に思われる」
  • at first : 「最初は、初めは」
❖ "Yet that is precisely ~ "「しかしそれこそ、まさに、あなたが時間についての新しい考え方を必要としている理由である」。つまり、古い時間概念に縛られていたあなたが、新しい時間についての考え方を学ぶことで、知覚の不確定性や知覚の幻想性を知る必要があるのだ。"This first time ~ "「この初めて学ぶ(時間についての)考え方は、実際、当初感じていたほどには奇妙でなくなる」。地球が平面ではなく球体であると学んだ昔人、あるいは、地球が太陽の周りを回っていると学んだ昔人が、学んだ当初は、新しい考えを奇妙に思っただろうが、今では何の不思議もない考え方である。同様に、無時間の実相世界から、時間依存のこの世界が幻想されているという新しい考え方も、時間が経てば、その奇妙さを失うだろう。まずはとりあえず、時間と感覚の密接な結びつきを学べばいいのだ。



3. Look at a cup, for example. Do you see a cup, or are you merely reviewing your past experiences of picking up a cup, being thirsty, drinking from a cup, feeling the rim of a cup against your lips, having breakfast and so on? 
  • look at : 「〜に目を向ける、〜を見る」
  • for example [iɡzǽmpl] : 「例えば、例として」
  • merely [míərli] : 「ただ単に、単に」
  • review [rivjúː] : 「もう一度見る、見直す、洗い直す、振り返る」
  • past [pǽst] : 「過去の、これまでの」
  • experience [ikspíəriəns] : 「経験、体験、見聞」
  • pick up : 「持ち上げる、拾い上げる、手に取る」
  • thirsty [θə́ːrsti] : 「喉が渇いた、飲み物を欲しがる」
  • rim [rím] : 「縁、枠、へり、周縁」
  • against [əɡéinst] : 「接して、押しつけて、あてがって」
  • lip [líp] : 「唇」
  • breakfast [brékfəst] : 「朝食」
❖ "Look at ~ "「たとえば、カップを見てみなさい」。"Do you see ~ "「あなたは、カップを見ているのか」。"or are you merely ~ "「あるいは単に、咽が渇いていて、カップを持ち上げ、カップから水を飲み、あなたの唇がカップの縁に当たる感触を覚え、朝食を摂ろうとしている、とか何とかの経験を、あなたは再現して見ているだけなのか」。時間的な過去の経験が、事物の存在を確信させている。物を見ているのではなく、物を見た経験を再現しているのだ。実相的には、そこにカップは存在しない。空(くう)なのだ。だから、あなたの知覚が正しいのなら、あなたはカップを見ないはずだ。しかし、過去の経験に基づいて、そこにカップを再現し、幻想のカップを再体験しているのである。これが、『色即是空、空即是色』である。



Are not your aesthetic reactions to the cup, too, based on past experiences? 
  • aesthetic [esθétik] : 「美の、感覚の、感覚的な、感性による」
  • reaction [riǽkʃən] : 「反応、応答、態度」
  • based on : 「〜に基づいている」
❖ "Are not your aesthetic ~ "「カップに対するあなたの感覚的な反応もまた、過去の経験に基づいていないだろうか」。空(くう)なる場所に、あなたは過去の経験に基づいてカップを再現し、それを見ているのだが、見て感じる、その感じさえも、過去の経験に基づいて幻想しているのではないだろうか。瀬戸物は光沢があり、滑らかで、ひんやりし、ちょっと重く、唇を当てるとホッとする、等々、これらも、あなたが経験に基づいて再現した結果なのだ。



How else would you know whether or not this kind of cup will break if you drop it? 
  • whether [hwéðər] or not : 「〜かどうか、いずれにせよ」
  • break [bréik] : 「壊れる、割れる、折れる、砕ける」
  • drop [drɔ́p] : 「落とす」
❖ "How else would ~ "「そうでなかったら、どうして、この種のカップが落としたら壊れるかどうか、あなたは知っているのだろうか」。あなたは、瀬戸物のカップは床に落とせば壊れると、経験上知っている。そのようにすり込まれているから、カップを落とせば壊れるという現象が再現されるのだ。スプーンは固いと思っているから、曲がらない。



What do you know about this cup except what you learned in the past? 
  • except [iksépt] : 「ただし、〜ということを除いて」
  • learn [lə́ːrn] : 「〜を学ぶ、〜に精通する、〜を覚える」
❖ "What do you know ~ "「過去にあなたが学んだものでなかったら、あなたは、このカップについて何を知っているだろうか」。何も知らないのだ。そして、あなたの感覚や思考が、実相的に正しい状態にあるなら、そこにカップは存在しないと認識するのである。経験による思い込みがなかったら、あなたが幻想を再現させることは不可能なのだから。



You would have no idea what this cup is, except for your past learning. Do you, then, really see it?
  • except for : 「〜を除けば、〜を別にすれば」
  • learning [lə́ːrniŋ] : 「習うこと、学ぶこと、学習」
❖ "You would have ~ "「あなたの過去の経験がなければ、このカップが何であるか、あなたは何も思いつかないだろう」。"Do you, then ~ "「そこで、(もう一度)、あなたは本当にカップを見ているのか」。カップを見ているのではなく、過去の経験に基づいてカップを再構成し、空(くう)なる場所にそれを幻想してるだけだ。あなたはカップを見てはいない。幻想を見ているだけだ。なぜなら、カップは、実相的に存在し得ないからだ。



4. Look about you. This is equally true of whatever you look at. Acknowledge this by applying the idea for today indiscriminately to whatever catches your eye. 
  • look about : 「周りを見回す、見て回る、目を配る」
  • equally [íːkwəli] : 「同じように、同様に」
  • be true of : 「〜についてもいえる、〜に当てはまる」
  • whatever [hwʌtévər] : 「〜するのは何でも」
  • acknowledge [æknάlidʒ] : 「認める、承認する、認識する、受け入れる」
  • apply [əplái] : 「適用する、応用する、利用する」
  • indiscriminately [ìndiskrímənət] : 「見境なく、無差別に」
  • catch one's eye : 「〜の目がくぎ付けになる」
❖ "Look about ~ "「あなたに目を移そう」。"This is equally ~ "「このことは、あなたが目にするものならば何にでも、等しく言えることだ」。コップに限りらず、あなたが目にするものなら何でも、過去における経験が基盤となって、あなたの知覚を生み出している。"Acknowledge this by ~ "「あなたの目を捉えたものなら何にでも、今日のものの見方を差別なく適用することによって、この事実を受け入れるようにしなさい」。たとえば、ランプが目に止まったら、あなたは、ランプが灯るという経験を基盤にして、ランプを幻想し、そこにランプを生み出して見ているに過ぎない、と思うのである。過去の現象に基づいてランプという経験を再構成しているのだ。




For example:

        I see only the past in this pencil. 
        I see only the past in this shoe. 
        I see only the past in this hand. 
        I see only the past in that body. 
        I see only the past in that face.
  • pencil [pénsəl] : 「鉛筆」
  • shoe [ʃúː] : 「靴」
❖ "For example: ~ "「たとえば、」"I see only ~ "「このペンシルに、私は過去を見ているだけだ」。"I see only ~ "「この手に、私は過去を見ているだけだ」。"I see only ~ "「あの肉体に、私は過去を見ているだけだ」。"I see only ~ "「あの顔に、私は過去を見ているだけだ」。過去を再現しているだけであって、実相的には、そこには何もない。まったくの空(くう)である。空(くう)に色(しき)を幻想しているだけだ。『空即是色』である。



5. Do not linger over any one thing in particular, but remember to omit nothing specifically. 
  • linger [líŋɡər] : 「長居する、居残る、ぐずぐずする」
  • linger over : 「ダラダラ長引く、〜に残る」
  • in particular : 「特に、とりわけ、格別に、詳細に、特別に」
  • remember [rimémbər] : 「〜を覚えている、〜を思い出す」
  • omit [oumít] : 「除く、除外する、入れない、含めない」
  • specifically [spisífikəli] : 「特に、明確に、はっきりと、具体的に」
❖ "Do not linger ~ "「一つのものだけに、特別にこだわって見続けてはいけない」。"but remember ~ "「そうではなく、特定のものを排除しないように気を付けなさい」。区別差別して、特定のものを排除したり、それ一つにこだわったりしないこと。淡々と、目を移動させていけば良い。



Glance briefly at each subject, and then move on to the next. Three or four practice periods, each to last a minute or so, will be enough.
  • glance [ɡlάːns] : 「ちらりと見る」
  • glance at : 「〜をチラッと見る」
  • briefly [bríːfli] : 「簡潔に、ちょっとの間、つまり、短く、簡単に」
  • subject [sʌ́bdʒikt] : 「題材、被写体、対象者、主題、題目」
  • move on to : 「〜に進む」
  • practice [prǽktis] : 「練習、訓練、演習 」
  • period [píəriəd] : 「期間、時期、時間」
  • last [lǽst] : 「続く、存続する、持続する」
  • enough [inʌ́f] : 「十分な、足りる」
❖ "Glance briefly ~ "「一つ一つの対象を、手短に見ては、次に移るようにしなさい」。"Three or four practice ~ "「一日に3〜4回、それぞれ1分かそこらの練習で十分である」。これもまた、過ぎたるは及ばざるが如し。熱中し過ぎないこと。さりげなく、淡々とレッスンすればいい。
 
 
 


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